マンション管理

マンションの管理会社変更(リプレイス)はそう甘くない

年に一度開かれるマンションの管理組合総会では、住民から管理会社への日ごろの不満が噴出することがあります。

 

例えば「共用部の清掃がきちんとされていない」「住民間のトラブルの際、まったく頼りにならなかった」「積立金の滞納も催促もしない」「管理費の内訳が不明瞭」などなど・・・

 

こういった不満から管理会社変更(リプレイス)を検討するマンション管理組合があります。

 

こういった不満は、主に管理会社の担当者(フロントマン)に向けられたものです。

 

フロントマンは、理事会と管理会社の窓口となる、いわば管理サービスの中核。

 

フロントマンの力量次第で管理組合が管理会社から受けられるサービスの中身も大きく差が出ます。

成功報酬型の管理会社変更は要注意

管理組合に管理会社変更(リプレイス)を薦めるのは、多くの場合、成功報酬型のコンサルティング会社です。

 

成功報酬型とはつまり、「管理会社を変更することにより削減できた年間管理費の50%」などを報酬として設定するやり方です。

 

コンサルティング会社からすれば、管理費が削減できればできるだけ、その報酬になりますので、とことん削減の方向に進めようとします。

 

管理会社変更(リプレイス)でありがちなのは、売主系列の管理会社から、ローコストが売りの独立系管理会社に変更するパターンです。

 

更に、清掃業務などを細かく見直し、管理委託費をどんどん削減していきます。

 

結果、年間数千万の管理委託費を削減させ、コンサルティング会社は千万単位の報酬を得るのです。

管理サービスの質の低下に、住民の不満が爆発

管理委託費が下がり、うまくいったかのように見えますが、後ににさまざまな問題が浮かび上がります。

 

それは、管理のレベルが著しく下がったことによる「住民の不満」です。

 

例えば、「清掃時間を削減しすぎたあまり、マンション内の清掃が行き届かなくなる」「ごみの整理が雑になった」「以前はやってくれた電気交換を管理会社がしてくれなくなった」などです。

 

積もり積もったサービスの質の低下に、住民が不満を爆発させるのです。

 

更に、本来の契約内容には含まれていなかったが、以前の管理会社ならフロントマンが好意でやってくれていたようなサービスがなくなったことへの不満を声にする方も。

 

ですが、こういった不満を管理会社に伝えると、1年更新の管理委託契約を、管理会社の側から更新拒絶される可能性もあります。

 

管理会社変更(リプレイス)の際、管理委託業務を受注するために、ただでさえぎりぎりの利益で請け負っていたところ、より高いレベルのサービスを求められるようになったため、管理会社が敬遠してしまうのです。

 

こうなってしまうと、管理組合はまた1から管理会社を探す必要があります。一度下げた管理費も、再度アップさせることになります。

 

結果として、管理組合は数千万のコストを支払い、かえって住民の不満を爆発させることになるのです。

成功報酬型コンサルティング会社の落とし穴

こういった成功報酬型の管理費見直しのコンサルティング会社の提案は、一見、管理組合にとっては魅力的に映るでしょう。

 

成功報酬であれば、管理組合はそのリスクを背負うこともなく、管理委託費見直しができるため、管理組合総会での住民への説得もしやすいでしょう。

 

ですが、大幅な削減が可能になるのは、上記のような「独立系ローコストに変更し、更に、サービスの質を落とす」ケースがほとんどです。

 

長い目で見たそのリスクを考えると、管理会社変更(リプレイス)には慎重になったほうがいいでしょう。

 

管理委託費が削減できても、マンション管理の質が低下して、マンションで 快適に暮らせなくなるのであれば意味がありません。

 

管理会社変更(プレイス)を薦めるコンサルティング会社の提案は冷静に受け止める事が必要です。

コンサルティング会社の中には、現行のマンション管理会社について、問題をあえて大きくし、混乱させ、本来必要のない管理会社変更を行わせて報酬を得ようとするところもあります。

 

管理会社変更によるデメリットを説明しないまま、変更することによるメリットだけを強調するようなコンサルティング会社は特に要注意です。

 

また、そのような成功報酬型のコンサルティング会社は、管理組合の快適なマンションでの暮らしより、自分たちの利益に直結する「大幅削減」ありきの仕事をしがちです。

 

これまで住民が享受してきたメリットも見逃しがちになります。本来、管理費の削減は、サービスのレベルをキープするか、むしろ向上させながらコストを抑え、住民が満足できるものでなければならないはずです。

もし管理会社変更を検討しているなら

まずは、マンション居住者に管理会社についてのアンケートを取ってみましょう。

 

管理会社変更しかない!と思っている人もいるかもしれませんが、管理会社やフロントマンへのの評価は実は人によってさまざまです。

 

その結果を踏まえ、まずは現行の管理会社と交渉してみましょう。

 

フロントマンが不満の原因になっているようであれば、管理会社に改善・交代をお願いしてみましょう。それでも、改善が見込めない、根本的な解決にならないようであれば、管理会社変更も検討の余地があるかもしれません。

 

現在、管理会社から受けているサービスについて洗い出し、マンションにとって本当に必要なサービスについて改めて考えるプロセスも重要です。

 

管理会社を変更することで、具体的に何がどう変わるのか?をしっかり考え、住民にもきちんと説明した上で、管理会社は変更しましょう。

 

編集:BORDER5編集部
監修:さくら事務所マンション管理コンサルタント(マンション管理士)

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