修繕積立金

グレーシアパーク八王子みなみ野が取り組む点ではなく面で支えるマンション管理組合運営とは?<前編>

グレーシアパーク八王子みなみ野は2000年11月に竣工したBORDER5にも登録されている管理良好マンションです。非常に工夫されたマンション管理組合の運営の秘訣を前編と後編に分けて公開します。

BORDER5に登録したきっかけは?

一般的にマンションについて、住み替えをするか、永住するかなど、老後の住まいを検討する中で、近年ではマンション永住志向が高まっていることから、グレーシアパーク八王子みなみ野のマンション管理組合の皆さんは、これからはマンションの時代がくると感じていらっしゃったそうです。そのなかで自分たちのマンション管理水準を第三者に客観的に判断してもらうため、BORDER5へ診断を依頼をしていただきました。

 

グレーシアパーク八王子みなみ野では、現在国などが開始しているマンション管理評価制度に関しては、まだ必要性を感じていません。今後それら諸制度に登録するかどうかに関しては、世の中での必要性が高まった段階で検討するということでした。

 

また大きなポイントですが、現在当社のBORDER5以外のマンション管理を認定する制度は、登録するためにはコストが発生します。そのためグレーシアパーク八王子みなみ野では、現在は無料で登録可能なBORDER5のみで評価制度は充分ということでした。さらにありがたいことに、まずマンションの管理状態を診断するなら「BORDER5でまずチャレンジしてからでもいいのではないか!」という言葉もいただきました。

本格的にマンション管理に取り組むきっかけは2年目だった

グレーシアパーク八王子みなみ野が本格的にマンション管理について取り組むようになったきっかけは、竣工から2年目でした。きっかけは当時のマンション管理会社の担当者から「このままでは修繕積立金が足りなくなる」と軽く言われたことだったといいます。

 

そのため、まず管理組合のなかで「なぜ修繕積立金が足りなくなるのか」という議論から始まり、結果的に管理会社の変更(リプレイス)および管理費から修繕積立金まで見直すことになりました。逆に竣工2年目で大きな見直しがあったことは、現在のマンション管理の運営にもつながる大きな出来事になりました。ちなみに多くの場合、竣工2年目で様々な費用に関して大幅な見直しが行われるケースは珍しいことです。

管理会社を変えた経緯とその結果

竣工から2年目で大規模な見直しを行ったなか、管理会社を変更(リプレイス)していますが、これは先の管理会社の発言に加え、マンション管理組合の理事の中に初めてのマンション購入ではない経験者がおり、その方がマンションのお金周りを見直そうと音頭を取ってくれたことからでした。

 

マンションの理事会にはもちろん管理会社の担当者も参加することから、理事である他の住民は来たるべきときに備え、管理会社担当者の出席しない理事会を開くなどして意思疎通を図っていました。情報収集のためにいろんなコンサルタントなどと会話をし、結局のところ自分たちの家のことは自分たちで見直すという方針の元で、活動的に動ける人たちが理事の中に多くいたこともリプレイスを決める際は幸いしました。

長期修繕委員会の役割とは?

現在グレーシアパーク八王子みなみ野では理事会のほか、規約細則委員会・自治防災会・長期修繕委員会の3つの専門委員会があります。

 

長期修繕委員会は8期目に組織され、12期目には12年周期と言われる大規模修繕工事が行われました。グレーシアパーク八王子みなみ野では前述のとおり2期目にすでに修繕積立金に関しては手を打っていました。そのため1回目の大規模修繕工事後にも資金には余裕がありました。しかし、その状況のまま竣工から20年〜30年後を見据えたとき、今後老朽化していく建物や設備に対して、適切なタイミングで誰が修繕の判断をするのかというところまでは、管理組合の中では決まっていませんでした。その状況をクリアするために専門委員会として立ち上がったのが長期修繕委員会のはじまった経緯です。

 

竣工から2年目で大幅な見直しがあったグレーシアパーク八王子みなみ野ですが、修繕積立金に関しては専有面積1㎡につき129円です。この金額は他の都内のマンションと比較しても非常に安く設定されています。なぜグレーシアパーク八王子みなみ野では、この修繕積立金の設定にも関わらず赤字とならずに修繕計画をしっかりと立てられているのか。

 

グレーシアパーク八王子みなみ野では、まず竣工時から残っている修繕履歴の見える化に取り組みました。見える化が終わると、その後はこれからかかる修繕コストの妥当性の検証が重ねられました。(もともと管理会社が作成していた計画に対し、管理組合が起用した専門家を交えて妥当性を検証しました)そこから修繕項目に優先順位をつけ、毎年実施した修繕や工事を計画に当て込むことで常時アップデートされる体制を構築しています。

 

しかし、これだけ毎年度アップデートを繰り返しても、3回目の大規模修繕工事が見込まれる2048年には赤字になることがシミュレーションから分かっていました。グレーシアパーク八王子みなみ野ではその苦境を打開するための打ち手を修繕積立金の値上げには求めず、投資でカバーすることを目指しています。

 

その投資はどんなものかと言えば、修繕積立金の赤字対策として分散投資されています。この投資を通じて現在の計画では懸念される2048年のタイミングでも黒字になることが見込まれています。

 

ただ管理組合という組織上、投資自体はノーリスクではないため、管理組合では合意形成をしっかりと作り、議案として総会を通す必要性があります。グレーシアパーク八王子みなみ野では住民の合意形成をどう作っていったのかと言えば、もともと竣工から2年目の段階で債券で運用を始めていました。

 

そのため居住者の投資に対する不安が少なくなっている状況がある一方で、何度も居住者向けのアンケートを実施していくなかで投資に関する合意形成を作り、実際議案として通すことで投資を進めてきました。

 

ここで管理組合の資産運用を任せる会社の決め手は、2年目当時に証券会社勤務の理事がおり、その理事を通じて、東京都債などを購入したことでした。また投資はリスクを伴うため、管理組合としては購入する商品は証券会社に一任して運用を行っています。

 

運用成績も順調のようで、分散投資によって2048年に予定される3回目の大規模修繕工事は現在のところ赤字にはならない予想となっています。

 

管理組合の大規模修繕工事に対する考え方はシンプルです。すべての工事を大規模修繕のタイミングで行う必要はないと考えています。費用が一番かかる足場仮設が必要な工事は同時に行うべきですが、そのほかの工事は、できるだけ分散して実施する考えを採用しています。基本的に12年周期に設定されていることが多い大規模修繕工事も15年周期に変更しております。管理組合ではさらに周期を延ばせないかという検討を専門家に相談しながら進めています。

 

このような工事の周期を延ばすアイデアは研修で知識を得たり、専門家から話を聞くなど、管理組合では大規模修繕工事を12年周期で行うことに疑問を持ったことがきっかけで取り組みが始まっています。グレーシアパーク八王子みなみ野のマンション管理方式はいわゆる「状態監視保全型」のマンション管理方式です。マンションの状態を自分たちの目で見て劣化状況を把握し、修繕が必要な不具合が発生した場合、その必要な内容の修繕工事だけを実施しています。

 

ただグレーシアパーク八王子みなみ野では、居住性向上に向けた工事は別な考え方を持っており、窓サッシを早い時期にグレードアップしています。共用エレベーターに関しても更新時期よりも早い時期に、地震や事故などの安全面や将来のメンテナンスコストも考慮したうえで更新されるなど、管理組合のなかでしっかり優先順位を検討されたうえで修繕工事が実施されています。

 

窓サッシの交換に関しては、助成金を有効活用することで、予定よりも早期の竣工から19年で交換されています。この交換に際してもアンケート結果などを踏まえて3年ほどの期間をかけて検討した上で実施されています。最初にアンケートを取った段階では必要と感じていた住人は少なかったものの、結露に悩まされていた住民に対しては、窓サッシを実際に交換することでかなりの効果がありました。一番良いグレードのサッシに交換したことで、断熱・遮熱・遮音性能にかなり変化がありました。

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