修繕積立金

中古マンションの修繕積立金が安い!これっていいこと?悪いこと?

中古マンション購入時、多くの方が住宅ローンを利用され、月々の返済額も考慮しながら購入物件の予算を決められると思います。

 

そして、そこに加えて分譲マンションで必要なのが、月々の「管理費」と「修繕積立金」。どうせなら、月々の返済額同様、負担は減らしたい、なるべく安いほうがいい、と考えるかもしれません。

 

ですが、管理組合の貯金ともいえる修繕積立金は単純に安いほうがいいものなのでしょうか?そもそも、マンションによってなぜこうも金額が違うのでしょうか?

 

ここでは、さくら事務所のマンション管理士が修繕積立金を例に、中古マンション購入時にチェックしておきたいその管理状況について解説します。

修繕積立金が安い!これっていいこと?悪いこと?

分譲マンションでは、各区分所有者がその専有面積に応じて「修繕積立金」を負担します。一般的に12~15年程度で実施される大規模修繕工事をはじめとして、建物を長く安心して使える状態を維持するために区分所有者が計画的にプールしておくのです。

 

検討中の中古マンションが修繕積立金を適切な額、計画的に積み立ててきたか?を確認せずに購入してしまうと、購入してからとんでもない過去のツケを払わされる可能性もあります。

 

例えば、中古マンション購入時に、月々のローン返済額、修繕積立金、管理費などを合計して、月々の負担額として考える場合、修繕積立金や管理費も安い方がいいと思ってしまうでしょう。ともすると、「なるべく修繕積立金が低い」マンションを選んでしまうかもしれません。

 

ですが、修繕積立金が低いことは素直に喜んでいいことなのでしょうか?

 

結論から言ってしまえば、積立金が低いということを手放しで喜んではいけません。むしろ、なぜ低いのか?を疑ってかかったほうがいいでしょう。

 

新築分譲の際、「修繕積立金」の金額は分譲会社が設定するのですが、より売りやすく、月々の負担を低く見せるために、低めに設定しているケースがほとんどです。

 

しかし、最初の負担は抑えていても大規模修繕工事には一定の費用は掛かりますので、資金不足で工事ができないという事態を避けるために、自分たちで見直しをする必要があるのです。

 

ですが実際、これが適切にできていないというケースが少なくないのです。

修繕積立金が十分かどうかはなにを見ればわかるのか?

では、どうすれば修繕積立金が計画に積み立てられているか、わかるのでしょうか?購入前にチェックすることは可能なのでしょうか?

 

まずチェックしていただきたいのは、大規模修繕工事などの修繕計画について記された「長期修繕計画書」と管理組合の「収支決算書」です。

 

大規模修繕工事は12年程度の周期で計画されるのが一般的で、予算や修繕項目などどんな計画が立てられているか、長期修繕計画書を見ればわかります。

 

決算書では特に、「修繕工事に必要な費用を長期修繕計画の通りにきちんと積み立ててきているか?」「今後、修繕費用が大幅に不足すること可能性はないか?」ということを確認しましょう。

 

積立金が足らずに大規模修繕工事の費用が赤字になる場合、補填のために積立金の急な値上げ、一時金の徴収、また、管理組合が金融機関から借り入れを行わねばならずその返済の負担など、今後なんらかの増額を強いられる可能性が高いということになります。

 

【「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」による、修繕積立金の目安】

では、一般的にどれくらいの金額ならいいのでしょうか?

 

令和3年(2021年)9月に改定された国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」に修繕積立金額の目安が載っています。

 

例えば、地上10階建てで、建築延床面積が5,000m2未満の70m2のマンション(機械式駐車場なし)を購入した場合の修繕積立金の目安を算出してみると、

 

「専有床面積当たりの修繕積立金の額×購入予定のマンションの専有床面積」なので、

 

平均値335円×70m2=23,450円。

つまり修繕積立金の目安(平均値で、修繕積立金以外からの収入がないケース)は、23,450円/月。

 

とはいえ、マンションの規模や立地、仕上げ材によっても異なりますので、あくまで目安として参考までに捉えておくといいでしょう。

 

積立方式は「段階増額方式」?「均等積立方式」?
修繕積立金の積み立て方式にも、「段階増額方式」「均等積立方式」の2種類があります。

 

●段階増額方式
3年や5年ごとなど、段階的に上がっていくことを見込んだもの。

●均等積立方式
ずっと一定額を負担する積立方式。段階的に上がっていくものに比べ、当初の負担は段階増額よりも高くなります。

 

新築分譲時は、基本的に段階増額方式が取られています。当初の負担を低く抑えて、購入のハードルを下げるためというのもあるでしょう。ですが、最初から増額を予定していても、毎回、管理組合総会で過半数の賛成が必要になります。

 

本来増額する予定であっても、住人の過半数から同意が得られないためにどんどん先送りされてしまう・・なんて危険もあります。

 

大規模修繕工事を迎えるころには、修繕積立金が不足していた、なんてことにもなりかねません。

均等積立方式を採っているマンションは、新築分譲時の段階増額方式から自分たちで積立方式を変更しているパターンですが、まだまだ圧倒的な少数派です。

 

遅かれ早かれ必要になるお金ですので、老後に大きな負担を先送りしないように、永住意識の方が多いマンションには特に向いているといえます。

 

コスト意識や計画性が高いマンション管理組合で採用されることが多く、結果的に非常に安定的な管理を行っているケースが見られます。

どちらの方式で積み立てているかも確認しましょう。

豪華な共用設備がそろう物件の落とし穴

ジム、シアタールーム、ピアノ演奏室など共用設備が充実しているマンションは、当然ながら維持管理のためにもお金がかかります。

 

噴水や水盤、プール、スパなど、水を使う設備は特に大きく影響します。また、特別な共用設備がなくても、機械式駐車場やディスポーザーなど生活に身近な設備もそれなりの維持費や修繕費用が掛かることは覚悟しましょう。

 

一般的にディスポーザーの排水管は少なくとも1年程度に1度の清掃、ブロアポンプは少なくとも約8~12年程度ごとに1度の交換を必要とします。

 

前出の国土交通省のガイドラインによる修繕積立金の平均額には、機械式駐車場やディスポーザーなどの特別な設備は含まれていません。

 

機械式駐車場を例に、具体的な修繕費を算出してみましょう。

前出の国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」より、機械式駐車場がある場合の修繕積立金加算額の目安金額が出ています。

 

例えば、100世帯で3段(ピット1段)昇降横行式機械駐車場が50台分ある場合、「メンテナンス費用×台数÷世帯数」なので、7,210円×50台÷100=3,605円。

 

つまり加算額の目安は、3,605円/月となります。

 

中には、あまり使用されていないもの等、不要な共用設備を廃止する管理組合もあります。ですが、共用設備の変更は、管理組合総会で4分の3の賛成が必要になります。

 

しっかりした管理組合ほど、不要な共用設備はどんどん撤廃したりほかの有効な設備に変えたりする積極性がありますが、全戸の4分の3の賛成が必要というのはすべてのマンションにおいて簡単にできるものではありません。

 

中古マンション購入を検討するタイミングなら、今すでにある設備は、これから先も維持されていく可能性が高いと考えておくほうがいいでしょう。

 

自分が必要としない設備にも維持管理費用を取られ続けたり・・ということになってしまいます。設備が充実したマンションはそういったポイントも注意が必要です。

高いか安いかではなく、適切か?が大事なポイント

いかがでしたでしょうか?

 

修繕積立金の価格が妥当かどうかを購入前に見極めるのは難しいと思いますが、一般的な目安より著しく安くないか?計画に沿ってきちんと積み立てられているか?を確認しておくといいでしょう。

 

修繕積立金の問題に限らず、マンションの管理状況は、入居してからのマンション生活の快適性も左右する大きな要素ですが、実情では千差万別。

 

マンションによって大きな差があります。単純な良し悪しでもなく、各々抱えている問題も異なります。

 

購入前に、マンションの管理状況をチェックしたいという方は、さくら事務所にお問合せください。

お預かりした資料から、マンションの管理状況をチェックいたします。

 

編集:BORDER5編集部
監修:さくら事務所マンション管理コンサルタント(マンション管理士)

一覧へもどる