防災
【後編】「夜間は動かない」「不作為も免責」!管理規約の革命的改正と、毎年アップデートし続ける「超・実践型」防災訓練の舞台裏
今回の後編では、実際に大きな被害を出さずに済むためにおこなっていた実践的な防災訓練など秘訣について、BORDER5アンバサダーである應田が迫ります。
日本のマンション管理の常識を覆すほどの革命的な改正とは
應田『後編では、ヴィルフォーレ稲毛様が誇る「圧倒的な災害対応力を支える仕組み」について、さらに深く迫ります。前編でご紹介した、豪雨の夜の「深夜24時の停電をあえて翌朝まで放置する」という冷静な決断や、役員の果敢な初動対応の背景には、なんと管理組合の最高法規である「管理規約」そのものに、日本のマンション管理の常識を覆すほどの革命的な改正が行われていたそうですね。具体的にどのような内容なのでしょうか。』
桜井『はい。私たちは第35期通常全体総会において、管理規約に「第51条の12(初動対応)」を新設・改定し、有事における「初動対応責任者」の役割と権限、そして「義務と免責」を極めて具体的に明文化しました。』
應田『追ってお寄せいただいたサンプル資料『規約改正案(第51条の12)』も熟読させていただきましたが、「初動対応責任者への緊急立ち入り・指示権限」や「先決決済権限」だけでなく、「深夜や危険時はあえて動かない(不作為)」ことも含めた100%の個人免責規定、さらには実働への「正当な報酬規定」やノウハウ継承のための「期差任期」まで明記されていて感銘を受けました!プロのマンション管理士の視点から見ても、信じられないほど先進的で実効性の高い強力な規定です。通常、災害時に「理事長が独断で緊急工事を頼んだら後から責められた」あるいは「危険の中で対応しなかったため被害が広がったと責任追及された」という悲劇をよく目にします。この規約では、善意の判断だけでなく「あえて動かなかった(不作為)」ことに対する免責までカバーしている。だからこそ、前編で伺った「深夜24時の停電復旧を翌朝まで放置する」という判断も、非難を恐れずに堂々と下せたわけですね。』
桜井『その通りです。毎年交代する一般の役員にとって、有事に重い決断を迫られるのはプレッシャーが大きすぎます。だからこそ規約で「安全最優先」と「個人免責」を明確に定めて役員を守ることで、萎縮せずに思い切ったベストな行動が可能になるのです。』
「報酬を受け取ることが出来る」という規約を設けたわけ
應田『さらに「報酬を受け取ることができる」という規定もありますが、これはどういった意図で盛り込まれたのでしょうか。』
桜井『すべてを無償のボランティア精神だけに頼ると、組織はいずれ疲弊してしまいます。有事の際に夜間に何時間も拘束されて重い役割を果たしたことに対して、正当な実働手当を支払える明確な根拠を規約に入れておく。これによって、組織としての持続可能性を持たせています。』
津和『また、ハード面でも初動対応責任者3名には管理事務所の「マスターキー」を付与しており、夜間で管理員さんが不在であっても自力で入って「災害対策本部」を立ち上げられる体制を整えています。さらに任期は2年ですが、全員一斉交代によるノウハウ途絶を防ぐため、1名だけあえて任期1年とする「任期ずらし(期差任期)」を導入し、毎年必ず経験者が残る仕組みにしています。』
毎年おこなう「超・実践型」の防災訓練
應田『規約というソフト、マスターキーというハード、そして期差任期という組織の継続性まで完璧に連動していますね。そして、作ったマニュアルを決して眠らせない「超・実践型」の防災訓練を毎年行われているとのことですが、その実態を教えてください。』
津和『はい。当マンションでは「震度5強以上の地震が発生した場合」の役員対応マニュアルを定めており、毎期新しい理事会が発足すると2ヶ月以内に役員防災訓練を必ず実施しています。訓練では住民の「安否確認マグネット掲示(回答率9割)」の集計に加え、未回答住戸への直接訪問訓練、集会室(千葉市登録避難所)の設営訓練、防災井戸からの水汲み上げ訓練などを実際に体験します。』
應田『実際に毎年動かしてみることで、得られた気づきはありましたか。』
津和『避難所用の備蓄「ダンボールベッド」を実際に組み立てる訓練をした時のことです。2年前に組み立てた際はスムーズだったのですが、翌年別の役員が組み立てようとすると全く組み上がらなかったのです。原因を調べると、最初の年に片付ける際、良かれと思ってジャバラ構造のパーツを細かく分解しすぎて噛み合わせが分からなくなっていたためでした。実際に「使って、片付けて、また使う」訓練をしていなければ、大震災当日に現場で誰も組み立てられないという最悪の事態になっていたでしょう。動かして初めて分かるリアルな教訓でした。』
「実効性のあるマンション防災」の極み
應田『「備蓄している」だけで安心している管理組合が最も陥りやすい落とし穴ですね。本当に深い教訓です。また、日常の有事に備えるためのマニュアルも整備されているそうですね。』
斎藤『はい。日常トラブルである「専有部の漏水事故」や「孤独死」に対する初期対応マニュアルも管理事務所に常備しています。こうした日頃の「小さな有事」への備えが、大規模災害時の対応力を高める基礎体力になっています。』
桜井『そして何より、初動対応責任者の3名はLINEグループで常に繋がっており、「週末は旅行で不在にする」「私はいるから大丈夫」といったスケジュール共有を密に行っています。お互いの状況が可視化されているからこそ、プレッシャーを感じずに安心して任せ合える関係が築けています。』
斎藤『誰か1人だけが完璧である必要はありません。3人がお互いの不在を補い合うことで、24時間365日常にバックアップが機能するチームになります。お互いの状況がスマホで可視化されているからこそ、プライベートも安心して過ごせます。』
津和『LINEで情報を共有しておけば、自分がその場にいなくても対応状況が共有され、全員の中に「暗黙知」としての知識が蓄積されます。この一体感があるからこそ、前向きに取り組むことができています。』
應田『日常のLINE連携から、泥臭い事前清掃、規約による役員保護、そして毎年試行錯誤する訓練まで、ヴィルフォーレ稲毛様の取り組みはまさに「実効性のあるマンション防災」の極みですね。全国の管理組合にとって最高のお手本になるお話でした。桜井様、津和様、斎藤様、本日は本当に貴重なお話をありがとうございました!』
